森羅万丈

はてなダイアリー(~2017)から引っ越し、心機一転リスタートです。

ゴールドシップが達成するのは「偉業」か「異業」か

早いもので、2015年も間もなく終わろうとしています。

年末における競馬会の風物詩といえば、有馬記念
今更指摘するまでもなく「ラストランの名馬」が強いレースです。
オグリキャップしかり、ディープインパクトやオルフェーブルしかり、
最近ではジェンティルドンナしかりと、それこそ枚挙に暇がありません。

しかし、今年のゴールドシップは、これまでの実績が示す通り、
お決まりのパターンでは収まらないという気がしてなりません。
ラストランの有馬記念でも、何かやらかしてくれるのではないか、
そう思っていたところ、興味深い資料を目にしました。

ゴールドシップ有馬記念は、3歳時には優勝しているものの、
4歳時と5歳時には、2年連続で3着という結果が残っており、
今年も3着なら、なんと「有馬記念3年連続3着」という、
ナイスネイチャ以来の、偉業ならぬ「異業」達成となります。

もちろん、地力を考えれば、勝っても不思議はありませんが、
破天荒な現役生活の締めくくりという観点に切り替えると、
案外、こんな結末も有りなのかな、という気がしています。
今年の流行語も「トリプルスリー」だったわけですし。

じゃあ、代わりに勝つのは誰なんだ、ということになるわけですが、
馬ではなく調教師がラストランの、ワンアンドオンリーに注目しています。

「悪いインフレ」と「悪いデフレ」はどちらも良くないという話

引き続きの隔月更新ですが、無理やりモチベーションを上げているのではなく
2か月に1回は自然とモチベーションが上がってくれるのは幸いです。
0と比べれば1は無限大なので、完全に折れることの無いようにしたいです。

さて、今回も読書感想文ですが、アマゾンレビューで好評な中原圭介氏の著書です。
アベノミクスの恩恵を受けていない人達が、歯に衣着せぬ物言いに溜飲を下げる一方で、
批判層の支持を集めたいがゆえの批判ありきの評論に過ぎないという意見もあります。

実際に読んでみて感じたのは、著者は決して盲目的なデフレ信奉者ではなく、
インフレであろうがデフレであろうが、悪いものは悪く、良いものは良いという
極めて合理的な視野の持ち主でありつつ、世の中にアベノミクス賛辞が溢れるがゆえに
真っ向勝負とばかりに「悪いインフレ」の問題点を意識的に羅列している、ということです。

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「良いインフレ」・・・名目賃金の上昇が物価の上昇を超え、実質賃金も増える状態。
「悪いインフレ」・・・名目賃金の上昇が物価の上昇に及ばず、実質賃金が減る状態。
「良いデフレ」・・・名目賃金の低下が物価の低下より緩く、実質賃金は増える状態。
「悪いデフレ」・・・名目賃金の低下が物価の低下より激しく、実質賃金も減る状態。

現在は2番目の「悪いインフレ」で、確かにデフレ脱却の傾向は見えているものの
結局のところ「悪いデフレ」から「悪いインフレ」に移行したに過ぎない。

一方、「悪いデフレ」は国全体が緩やかに地盤沈下を起こしている状態なので
誰もが問題意識を共有しやすいのに対し、「悪いインフレ」においては
高額所得者や大企業といった富める者はますます富を蓄えていくため
庶民や中小企業の窮状が伝わりにくく、格差が助長されてしまう。

しかるに、インフレ自体は決して日本再成長の特効薬ではなく、
問題点を直視し、現状の条件反射的な賛辞は止めなければならない。

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と、主張自体は正論そのもので、頷ける部分も多々あるのですが、
あまりにも「悪いインフレ」の批判にエネルギー(文章量)を注ぎ込み過ぎていて、
具体的に、良いインフレに転換するなり、良いデフレに巻き戻すなりするには
どうしたら良いのかという建設的な意見の言及が乏しい点は、残念でもありました。

インフレ対デフレという二極論ではなく、視野を広げるという意味で
勉強のため読むと割り切れば、ちょっと高いですが、良い本だと思います。

個人的には、原油価格低下という圧倒的なデフレ要素が発生している以上、
無理やり金融緩和で対抗してインフレ継続に拘るのは勘弁していただいて、
物価の上げ下げに関する政策は一旦リセットして、いわゆる「三本の矢」を
三本ともちゃんと射貫くための政治努力をしてほしいと思う次第であります。

これから日本で起こること

これから日本で起こること

読売巨人軍黄金時代の到来は道半ば

このところ隔月更新という体たらくですが、
完全放置だけはしないよう、出来る範囲で頑張ります。

今回は、野村克也氏の著書『読売巨人軍黄金時代再び』の紹介です。
2013年6月、つまり、直近で日本一になった2012年の翌年なのですが、
決して当時の巨人を褒めちぎるのではなく、さすがの「野村節」で
チームの課題を丹念に拾い出しては問題提起するという内容であり、
まるで2015年の苦戦を当時から予測していたのでは、と思うほどです。

要するに「読売巨人軍が黄金時代を再び迎えるには?」という内容です。
この前年に発売された『阪神タイガース 暗黒時代再び』も
刺激的な題名とは裏腹に「暗黒時代を回避するには?」という提言であり、
見出しだけで衝動買いすると痛い目に遭うのは両方に共通しています。
ある意味「自称ひねくれ者」ノムさんの面目躍如、かもしれません。

残念ながら、完全に下降線に入ってしまったチーム事情を鑑みると
読売巨人軍黄金時代の到来は夢物語に逆戻りの感が拭えませんが、
原監督の長期政権下で、酸いも甘いも噛み分けた中心選手が
近い将来に指導者としてチームを再び活性化させて、
ぜひ、黄金時代の到来に再挑戦してほしいです。

読売巨人軍黄金時代再び (宝島社新書)

読売巨人軍黄金時代再び (宝島社新書)

阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)

阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)

その意味では、批判が殺到している「山口哲也の起用法」ですが
現役選手としての上がり目は無くても、苦しい経験を重ねることが
やがて指導者となった時に活きてくるという見方も出来ます。

もしかすると、原監督は自らの「引き際」を察知して、
目先の結果よりも「人を育てる」ことを重視しているのではないでしょうか?

打たれても打たれても、大事な場面で山口をコールする、
素人目にも不可解な采配を振るう「理由」が必ずある筈です。

心の拠り所を喪った原辰徳の試練

ペナントレース前半戦の終了時点で、42勝43敗1分、借金1。
交流戦セ・リーグのチームが総崩れだったこともあり、
首位のDeNAとは0.5ゲーム差ですが、楽観できる状況ではありません。

何より、今の巨人には「伸びしろ」が全く感じられません。
若手は伸び悩み、ベテランは不調、ケガ人は数え切れず。
活躍する選手が出てきても、賞味期限は数試合といったところで
すぐに埋没してしまい、チームを牽引するだけの力は見られません。

そんな中で後半戦を迎えるわけですが、興味深い記事を目にしました。
巨人OBで、ヤクルトと西武の監督しても活躍した広岡達朗氏が
現監督の原辰徳を批判する内容で、総論には賛同しかねるものの、
各論については大いに頷ける部分があり、特に目を引いたのは、

『そういえば原の采配は、昨年父親が亡くなってからおかしくなりましたね。』

この部分については全面的に同意したいというか、せざるを得ません。
もっと言えば、采配に関しては結果論という部分も多々ありますが、
何よりも「覇気」が無く、それが選手に伝播している気がしてなりません。

昨年のクライマックスシリーズで4連敗を喫して敗退したように、
今年のペナントレースも「本来の力はこの程度ではない」と言われながら
気が付けばシーズンが終わり、不本意な結末を迎える気がしてなりません。

ただ、声を大にして反論したいのは、原監督は決して凡将では無いということ。
とかく「戦力不足のチームで勝ってこそ優秀な指揮官」と言われがちですが、
日本球界屈指の選手が揃うWBCで、実力を引き出して優勝という結果を残す、
これを「優秀な選手揃いだから勝てた」の一言で片付けるのは愚の骨頂です。
チームを率いることの難しさは、選手の能力次第で変わるものではありません。

長期政権だったとはいえ、就任時の年齢が若く、まだ56歳。
今年の結果がどうあれ、決して無能や限界の烙印を押すのでなく、
将来的な再就任も視野に入れた「休養」に入っても良いかと思います。

勝負所で巨人を支える「スーパーサブ」の力

4月から部署が変わって何かと慌ただしく、心身の余裕がありませんでしたが、
これから少しずつ更新頻度を戻していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

さて、5月9日の巨人戦では、0−1の9回に代走で出場した鈴木尚広
盗塁で得点圏に進出し、犠打と安打で同点のホームを踏み、試合を振り出しに戻すと
11回には併殺崩れで出塁し、盗塁と捕逸で三塁を陥れ、内野ゴロの間に生還。
チーム全体で3安打ながら、まさしく「鈴木の足」で取った2点で勝利しました。

その陰で、11回の先頭打者、寺内崇幸が13球粘った末に死球で出塁しており、
寺内が一塁にいなければ、続く鈴木が併殺崩れで残ることもありませんでした。

連敗が続くと、どうしても、現場の指揮に対する懐疑的な声が大きくなります。
坂本勇人が負傷中の現在、なぜ寺内がショートのスタメンで使われないのか、
なぜ矢野謙次は二軍で固め打ちを続けているのに一軍に呼ばれないのか、等々。
その声を素直に聞けば、井端弘和の代わりに寺内をショートのスタメンで起用し、
金城龍彦の代わりに矢野を右の外野手兼代打で起用するということになるでしょう。

ですが、寺内がスタメンで活躍する姿も、矢野が年間を通して働き続ける姿も、
自分には想像できませんし、現在の起用法が間違っているとも思いません。

選手とは、コンピュータゲームの駒ではなく、それぞれの個性や特徴があり、
試合に出場すれば常に最大限の能力を発揮できる都合の良い存在ではありません。
野球における適材適所とは、どこを守らせて何番を打たせるかだけでなく、
起用のタイミングを熟慮して、選手の「無駄遣い」を防ぐことも重要です。

代打の切り札や代走のスペシャリスト、セットアッパーやストッパーだけでなく、
様々な「スーパーサブ」に支えられ、巨人は昨年までリーグを3連覇しています。
この記録を伸ばすには、主力選手の復帰や奮起が必要なのは言うまでもありませんが、
シーズン前半で戦力を必要以上に消耗しない「我慢」もまた、重要な要素です。

巨人ファンには胃の痛くなるような日々が続くかもしれませんが、
最後には笑ってシーズンを終えられると信じて、見守りたいと思います。

まだ「大塚家具の乱」は終わらない

今日の日曜日、一週間を総括するテレビ各局のニュース番組は
27日に行われた大塚家具の株主総会の話題一色という様子でした。

いわゆるワイドショー的な野次馬根性だけでなく
経営承継の難しさを指摘するなど、局や番組の特徴も出ていて
面白く(と言ったら失礼かもしれませんが)視聴させていただきました。

ただ、「親子の経営理念の対立」は各局とも強調していましたが、
実際に現場で働く社員の視点が欠落している、とも感じました。

総会の席上における、母親の「社員をいじめないで」という発言は
各局こぞって流してましたが、株主の野次が被されていたこともあり、
詰まるところ、敗者陣営の「負け犬の遠吠え」的な扱いを出ていませんでした。

日本経済新聞の記事によると、大半の店長は父親側に賛同したとのことです。
要は、社長の掲げる店舗改革に、現場は公然と拒否反応を示しているわけで、
母親の発言を「負け犬の遠吠え」と一蹴できるような状況ではありません。

ですから、株主に対して理路整然と理念を説き、経営権を掌握したのと同じように、
今後は社員に対しても、これまで以上に対話を重ねて、理解を得る必要があります。

言うことを聞かない、自分に対し逆らう、そんな理由で「粛清」を行えば、
結果的に、ワンマン創業者と揶揄された父親の、二の舞を演じることになります。
社長は賢明な方らしいので、そのような愚を犯すとは思いませんが、
理解を得ることに失敗すれば、現場の不満は解消されず、むしろ更に蓄積されます。

一部報道では、父親が「第二の大塚家具」を設立し、社員を大量に引き抜いて
意趣返しするのではと言われていますが、あながち、荒唐無稽な話とも思えません。
たとえ分裂しないとしても、肝心かなめとなる現場の士気が上がらないままでは、
家具業界に限りませんが、厳しい競争を勝ち抜いて、客を呼び込める筈もありません。

テレビが追いかけるのを止めた頃、大塚家具の「その後」に要注目です。

ダルビッシュ有の「左右の二刀流」という可能性

右肘の内側側副じん帯を部分断裂し、じん帯再建手術、
いわゆる「トミー・ジョン手術」を受けることが決まったダルビッシュ有
最近では、田中将大のように保存療法を受けるケースも見受けられる中、
主治医のみならず、セカンドオピニオン、更にサードオピニオンと
いずれも手術を勧められたということですから、間違いなく重傷でしょう。

しかし、会見やツイッターでのダルビッシュのコメントに、悲壮感は感じられません。
「基本的に人と自分は違うと思っている。自分なりのアプローチをしようと思っている」
「ポジティブにしか考えていないですし、野球界にプラスになるよう取り組んできます」
決して、症状を軽く見積もってはおらず、むしろ正面から向き合いながら、
それでいて復帰後の「特別な」自分の姿を見据えているようにも受け取れます。

そこで真っ先に思い浮かぶのが、茂野吾郎を彷彿とさせる「左投げ転向」ですが、
更に一歩踏み込んで、「左右の二刀流」を目指すのではないかという気がします。

昨年、「中4日は短すぎる。中6日あれば炎症は取れる」と発言したように
MLBの短いローテーションには、負傷する前から懐疑的だったダルビッシュですが、
だからといって即座にMLBのローテーションが根底から覆ることは有り得ません。
現実的には、選手側が何らかの自衛策を講じるしか無い、ということになります。

そこで「左右の二刀流」となるわけですが、これを実際に修得できれば、
利き腕で投げる日には、日本流の先発完投を前提とした球数無制限で相手をねじ伏せ、
中4日の次回登板は反対の腕で投げ、QS(6回3失点以内)で試合を作り、
その次の登板は、利き腕は中9日の休養万全で、再び相手打線を制圧する。
こんな投手が現実に存在したら、他球団にとっては悪魔も同然でしょう。

日本ハムの後輩・大谷翔平が「投打の二刀流」を夢物語から現実へと変えたように、
ダルビッシュも「左右の二刀流」という奇想天外なスタイルを確立して見せるのか?

それはさすがに言い過ぎとしても、ここ数日のダルビッシュの言動を見ていると、
手術して、リハビリして、復帰して、今まで通りの元気な姿で活躍するといった、
ありきたりと言っては失礼ですが、他の選手と同じ道を歩むのではなく、
何か「えっ…」と皆が思わず息を飲むような、何かを企てているのは確かだと思います。